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映画『戦場のピアニスト』あらすじと感想|主役俳優2人と監督の生い立ちに注目!

戦場のピアニスト

【簡単なあらすじ】

物語の舞台は1930年代後半。ポーランドのワルシャワ。

主人公のウワディスワフ・シュピルマンはピアニストとして生計を立てていました。

しかし、第二次世界大戦の勃発により彼の人生は一変。

ユダヤ人だった彼はナチスの迫害対象となり、ゲットーに押し込められます。

その後、彼の家族全員が絶滅収容所送りとなる中、ひとりだけこれを免れたシュピルマン。

多くの人に助けられながら、彼は絶望的に狂った世界を生き延びていきます。

ソ連軍がワルシャワのすぐそこまで迫った終戦間際、シュピルマンはナチスの将校ヴィルム・ホーゼンフェルトと出会い…?

りこ
りこ
最後、ノンフィクションならではの結末が待ち受けています。

『戦場のピアニスト(The Pianist)』基本情報

原題The Pianist
製作年2002年
上映時間150分
製作国フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス合作
主演エイドリアン・ブロディ(Adrien Brody)
トーマス・クレッチマン(Thomas Kretschmann)
監督ロマン・ポランスキー(Roman Polanski)
原作『ある都市の死』(Śmierć miasta)(1946年刊行)
ユダヤ系ポーランド人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(Władysław Szpilman)の実体験を脚色して映画化
受賞 カンヌ映画祭パルムドール受賞。

アカデミー賞7部門ノミネート。
監督賞、脚色賞、主演男優賞の3部門受賞。

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DVD、Blu-ray(ブルーレイ)

古い映画のため、少々入手しにくくなっています。

『戦場のピアニスト(The Pianist)』感想レビュー

ここから先は、ネタバレがあります。

事前知識なく、真っ白な状態で映画を楽しみたい方は、ご注意ください。

主人公シュピルマンの生きることへの執念

タイトルの「戦場のピアニスト」は、第二次世界大戦中のポーランドを生きた実在のユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンのことを指しています。

Władysław Szpilman
ウワディスワフ・シュピルマン
(Władysław Szpilman)
パブリックドメイン

ウワディスワフ・シュピルマン(Władysław Szpilman、1911年12月5日 – 2000年7月6日)は、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、作曲家。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AF%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%95%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%94%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3


シュピルマンがナチスのホロコーストを生き延びる実話を、脚色して映像化したのが、映画 「戦場のピアニスト」です 。

たいていのフィクションでは、戦場を最後まで生き延びるのは常に屈強な戦士ばかりですが、この映画では違います。

主人公のシュピルマンは、典型的な「戦って腕力で勝つヒーロー」とは正反対のタイプ。

いつも物静かでおとなしく、押しも弱い上に伏し目がち。

りこ
りこ
なんか臆病そう。

ピアノ演奏以上の肉体労働にはとても耐えられそうもないないシュピルマン。

例えば、映画の中のにこんなシーンがあります。

シュピルマン一家がゲットー送りになる前のこと。

生活資金が底をつき、彼が大切にしているベヒシュタイングランドピアノを売ることになります。

ゲットー送りになるシュピルマンの足元を見てピアノを買い叩く、無礼な買取人の男。

血の気の多い弟は激昂します。

しかし、静かにその様子を見ていたシュピルマンは、一言「持っていけ」と、買取人の男の言い値で愛用のピアノを売ってしまうのです。

自分のピアノをあんな下品な男の言い値で売るなんて、わたしなら絶対に耐えられません。

しかもシュピルマンはピアニストですから、自分のピアノへの愛情はさらに人一倍のはず。

ピアノを手放す時、どんなに無念だったろうと思います。

自分を襲う理不尽な出来事にじっと耐える。

ひたすら堪えぬく。

シュピルマンの強さはそういう静かな強さです。

そして彼は最後まで「生きること」への強い執念を見せます。

誰しもが「いっそ今すぐ死んだほうがマシ」と思うような境遇でも、シュピルマンは生きることを決して諦めません。

ユダヤ人への迫害が厳しくなるにつれ、彼はどんどんやつれ、やせ衰えていきます。

それでも最後まで決して希望を捨てず、まともな精神を持った人間の誰もが発狂しそうな極限状態を生き延びるのです。

りこ
りこ
まさに「しぶとい」という言葉がふさわしいシュピルマンなのでした。

ユダヤ人を虐殺する理由

線路

映画の中では、冒頭から何度も何度もナチスによるユダヤ人虐殺を見せつけられます。

「なぜそんなことをするのか?」

「一体何のためにやっているのか?」

繰り返し頭に浮かぶこの疑問。

「なぜこんな目に遭わなければならないのか?」という思いがシュピールマンの胸をよぎった時、ドイツ人兵士は彼のその表情を見逃しませんでした。

上機嫌に酔っぱらったそのドイツ兵は、こう吐き捨てます。

「なんでユダヤ人を殺すのかって?そりゃ、大晦日を祝うためさ!」

りこ
りこ
罪を憎んで人を憎まずと言い切れない、強烈な後味の悪さです。

ユダヤ人がドイツ語を話すのが当たり前?

ちなみに、この映画に登場するドイツ兵が話す言葉は、全てドイツ語です。

ドイツ兵は、ワルシャワでもドイツ語が通じることを当たり前だと思っています。

(例外的に1度だけ、下手くそな英語でユダヤ人に話しかけている場面がありますが)。

その様子を見ていると、つい、

「どこでもここでもドイツ語が通じるのが当たり前と思ってんじゃないわよ!」

と言いたくなりました。

もう一人の主役「級」登場人物

そしてこの映画には、もう1人主役級の人物、ナチス陸軍大尉ヴィルム・ホーゼンフェルトがいます。

シュピルマン同様、ホーゼンフェルトも実在する人物です。

ヴィルム・ホーゼンフェルト(Wilm Hosenfeld、1895年5月2日 – 1952年8月13日)は、ドイツの教育者、軍人。最終階級は陸軍大尉。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%88


ドイツ陸軍大尉のホーゼンフェルトも主役級なのですが、この2人が出会うのは、映画のかなり終盤になってからなんですね。

ユダヤ人のほとんどがナチスの蛮行により虐殺され、建物は破壊されつくし、ワルシャワがまったくの廃墟と化した頃。

夜中、シュピールマンがコッソリ缶詰を開けようと格闘しているところを、ホーゼンフェルトに見つかってしまいます。

ホーゼンフェルトに促されるまま、ピアノを弾くシュピールマン。

ドイツ人将校ホーゼンフェルトの弾いていた曲は、ドイツの作曲家ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」です。

一方、ポーランド系ユダヤ人のシュピルマンが弾くのは、祖国ポーランドの作曲家、ショパンのバラード1番。

それまで何年もの間、誰にも見つからないように、ピアノの音どころか声も出さず、物音も立てず、息をひそめて暮らしてきたシュピールマン。

戸惑い、最初は音を立てるのを怖がっているかのように、恐る恐るピアノを弾き始めます。

しかし、何年もの間弾くことができなかったピアノを前に、堰切ったようにあふれ出す彼の音楽への情熱。

ホーゼンフェルトの心に染みわたる、シュピルマンの演奏。

動画の手元を見ればお分かりかと思いますが、ショパンのバラード1番は普通の人間に弾ける曲ではありません。

いくらピアニストとはいえ、何年もピアノが弾けなかったのに、しかもフラフラの栄養失調状態で、超難曲ショパンのバラード1番の演奏が可能なの?…という疑問はこの際置いておきましょう。

いわゆる火事場の馬鹿力的に、技術、体力、集中力が発揮されたのかもしれません。

この映画では、冒頭から嫌というほどナチスの残虐な無差別殺人行為を見せられています。

もうホーゼンフェルトが登場するころには、反吐が出るほどナチスドイツ兵にうんざりしているわけですよ。

そこにとどめを刺すかのように、ナチス高官の軍服を着て登場するホーゼンフェルト。

りこ
りこ
まさに悪魔の権化のような立ち姿。

しかし、ナチスの軍服を身に着けていても、ホーゼンフェルトは心の全てをナチスに売り渡していたわけではなかったのです。

彼はシュピルマンをその場で撃ち殺したりはしませんでした。

ほんのつかの間、ピアノを弾く者同士、2人の心が通い合います。

しかし、もうすぐそこまで、ソ連軍が迫っていました。

「ユダヤ人迫害」を身をもって知る監督と2人の主演俳優

有刺鉄線

実話に基づいている本作にリアリティがあるのは当たり前。

実は、さらに主役を演じる2人の俳優と監督の生い立ちにも、この映画の名作としての評価を不動にする「秘密」が隠されていたのです。

シュピルマン(ピアニスト)役:エイドリアン・ブロディ

【ブロディ氏の生い立ち】

ポーランド系ユダヤ人の父と、ハンガリー人とチェコ系ユダヤ人のハーフである母の間に生まれる。

父エリオットはホロコーストで家族を失い、母シルヴィアは1956年のハンガリー動乱時にアメリカに亡命。

ブロディ氏の身近にホロコーストを体験した家族がいたことは、この映画での彼の演技を迫真のものにする、大きな助けになったはずです。

ブロディ氏はこの映画でのシュピルマン役を高く評価され、29歳という史上最年少でアカデミー主演男優賞を獲得しています。

ホーゼンフェルト(ナチス軍人)役: トーマス・クレッチマン

【クレッチマン氏の生い立ち】

ドイツ民主共和国(旧東ドイツ)デッサウ生まれ。

1983年9月 西ドイツに亡命

この亡命はハンガリー、ユーゴスラヴィアを経由し、オーストリア国境を徒歩で越えるという過酷なものでした。

東ドイツを命がけで亡命したクレッチマン氏の演じるホーゼンフェルト。必見です。

監督:ロマン・ポランスキー

主役を演じる2人の俳優だけでなく、監督のポランスキーも特筆すべき経歴の持ち主。

【監督ポランスキーの生い立ち】

父はユダヤ教徒のポーランド人。母親もポーランド人。

第二次世界大戦中、ゲットーに押し込められる。

第二次世界大戦中、父親は強制労働されられ生き延びたが、母親はアウシュビッツで虐殺された。

ポランスキー監督自身、ドイツ占領下のフランスにおける「ユダヤ人狩り」から逃れるため各地を転々と逃亡している。

なんと、ポランスキー監督自らナチスのホロコーストと「ユダヤ人狩り」のすさまじさを体験しているのです。

りこ
りこ
彼らの生い立ちを知った上で鑑賞すれば、さらに感慨もひとしお。

さて、世界中で高い評価を受ける本作には、さまざまな関連商品があります。

『戦場のピアニスト』関連作品

アップライトピアノ

【本】「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校:ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯|ヘルマン・フィンケ/著 高田ゆみ子/訳

こちらは2019年夏の新刊本です。

「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校、ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯を描いています。

原題:”Ich sehe immer den Menschen vor mir”: Das Leben des deutschen Offiziers Wilm Hosenfeld. Eine Biographie

サントラCD

created by Rinker
ソニーミュージックエンタテインメント

映画に挿入されたピアノ曲が収録されています。

収録曲

  1. 夜想曲第20番 嬰ハ短調[遺作]
  2. 夜想曲第19番 ホ短調 作品72-1
  3. 夜想曲第13番 ハ短調 作品48-1
  4. バラード第2番 ヘ長調 作品38
  5. バラード第1番 ト短調 作品23
  6. ワルツ第3番 イ短調 作品34-2 「華麗なる円舞曲」
  7. 前奏曲第4番 ホ短調 作品28-4
  8. アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22
  9. アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22
  10. ムーヴィング・トゥ・ゲットー:1940年10月31日
  11. マズルカ第13番イ短調作品17-4 (モノラル)

このCD収録曲のうち、10曲がAmazon Music Unlimitedでお聴きいただけます。

収録ピアノ曲の楽譜

ピアノ・ピース/原曲&やさしく弾けるバージョン

収載曲: 

  • 夜想曲 第20番 嬰ハ短調(1830)(遺作)
  • 夜想曲 第20番 嬰ハ短調(1830)(遺作)(やさしく弾けるバージョン)
  • バラード 第1番 ト短調 作品23
  • バラード 第1番 ト短調 作品23(やさしく弾けるバージョン)

りこ
りこ
通常版とやさしく弾けるバージョンの2通り掲載されているのが特徴です。

ピアノソロ 戦場のピアニスト the Pianist

この楽譜の掲載曲については、こちらを参考になさってください。

すぐ弾ける はじめての ひさしぶりの 大人のピアノ [ショパン編]

この楽譜の掲載曲については、こちらを参考になさってください。

りこ
りこ
簡単アレンジ版の楽譜です。

パデレフスキ編 ショパン全集 XVIII 小品集

パデレフスキ編のショパンの楽譜の場合、「夜想曲(ノクターン)20番」は「小曲集」に収録されています。

ノクターン集には収録されていないのでご注意ください。

原作本

映画「戦場のピアニスト」の原作となったのは、1946年にポーランドで刊行された『ある都市の死』(Śmierć miasta)です。

しかし、旧敵国のドイツ人がポーランド人を救ったという筋書きが好ましくないという理由で、絶版の憂き目にあっていました(Wikipedia)。

その後、シュピルマンの息子の尽力により、1990年後半になってようやく日の目見ることになります。

1998年
ドイツ語版”Das wunderbare Überleben”(奇跡の生存者)

1999年
英語版”The Pianist: The extraordinary story of one man’s survival in Warsaw, 1939-1945″

日本語版
2003年日本での映画公開時に「ザ・ピアニスト」から「戦場のピアニスト」に改題されました。

『戦場のピアニスト』 レビューサイト

Yahoo! Japan映画 4.14 点

映画.com 3.9 点

Movie Walker 4点

『戦場のピアニスト』まとめ

強制収容所

ショパンのピアノ曲の美しく悲しい調べ。

戦争による破壊行為の凄まじさ。

ナチスのユダヤ人虐殺の極悪非道ぶり。

極限状況に置かれてもなお、他の人を助けようとする行為の崇高さ。

多くの人が彼を助け、彼を助けた人が死んでいく非情。

りこ
りこ
その凄まじいコントラストが胸をえぐる作品です。