映画

映画『ワルキューレ』|シュタウフェンベルクの挑んだワルキューレ 作戦とは

映画ワルキューレ

【簡単なあらすじ】

第二次世界大戦末期の1944年7月20日、ドイツ国防軍将校によるヒトラー暗殺およびクーデターが実行されます。

映画「ワルキューレ」は、この有名な「7月20日事件」とその中心人物クラウス・フォン・シュタウフェンベルクの活躍を描いたノンフィクション作品です。

りこ
りこ
主演俳優はトム・クルーズ
本作では、ヒトラー暗殺というミッション・インポッシブルに立ち向かいます。

『ワルキューレ(VALKYRIE)』基本情報

原題Valkyrie
製作年2008年
上映時間120分
製作国ドイツ・アメリカ合作
主演トム・クルーズ (Tom Cruise)
監督ブライアン・シンガー(Bryan Singer)
原作1944年に発生したヒトラー暗殺計画とその指揮をとった実在の将校シュタウフェンベルクについて描くノンフィクション。

DVD、Blu-ray(ブルーレイ)

created by Rinker
ポニーキャニオン

映画予告編YouTube動画

『ワルキューレ(VALKYRIE)』感想レビュー

タイトルの由来となったヴァルキューレ作戦

本映画のタイトル「ワルキューレ」は、トム・クルーズ演じる主人公のシュタウフェンベルクが中心となって遂行する「ヴァルキューレ作戦 (ドイツ語Operation Walküre)」に由来します。

ヴァルキューレという作戦名は、ワーグナーWikipedia)のオペラ『ニーベルングの指環(Der Ring des Nibelungen)』に登場する、北欧神話の女神ヴァルキューレ(Walküre)にちなんで名づけられたものです。

リヒャルト・ワーグナー
リヒャルト・ワーグナー

りこ
りこ
なぜ軍事作戦にワーグナーのオペラの名前がついているの?

夫
彼の反ユダヤ的思想が、彼の死後、ナチスに利用されたんだ。

ヴァルキューレ作戦とは、もともと国内予備軍を結集し動員するためのものでした。

反ヒトラー勢力は、これをクーデターに利用できると考えます。

当時、占領地から捕虜や奴隷を大勢ドイツ国内に連れてきていたため、暴動が発生した場合にこれを鎮圧する作戦が必要だったことが修正の口実になりました。

こうして「万が一国内暴動が発生した場合、国内予備軍を動員して新たな戦闘部隊を立ち上げる」という修正を加えることに成功するのです。

シュタウフェンベルクがベルクホーフ山荘での会議に出席し、「ヴァルキューレ作戦」の修正案にヒトラーのサインをもらうシーン。

ワーグナーに心酔していたヒトラーは、作戦の名前がワーグナーの歌劇にちなんでつけられたことに喜び、内容をしっかり確認することなく署名してしまいます。

りこ
りこ
つい大好きなワーグナーに気を取られてしまったのでしょうね。

ヒトラー暗殺計画の発生回数はなんと計42回

ヒトラーは絶対的独裁者でしたが、彼の暗殺計画は実に計42回も企てられ(Wikipedia)、しかもすべて未遂に終わっています。

その42回の暗殺未遂事件のうち最後に「実行された」のが、映画『ワルキューレ』の題材となった「7月20日事件Wikipedia)」です。

これだけ何度も暗殺未遂事件が起こったことで、ヒトラーは暗殺を恐れるようになります。

パレードもしなくなり、人前に姿を現すことも避け、大本営に引きこもるようになったため、この頃ヒトラーに近づくことができたのは、ごくわずかな側近のみでした。

当時、現役の軍人の中でも、彼に直接面会できるごく限られた人物にしか、暗殺の実行は不可能になっていたのです。

この映画の中のヒトラーは、猫背でよぼよぼ、側近だけをそばに置いて一般人の前には滅多に姿を見せない、干からびた弱々しい老人として描かれています。

その一方、彼に反旗を翻すドイツ陸軍の軍人は屈強な戦士ばかり。

りこ
りこ
一対一で格闘になったら、絶対負けないのに!

もちろん事はそう簡単でないのはわかりますが、見ていてなんとももどかしいものです。

ちなみに、こうしてヒトラーが何度も暗殺の企てを逃れ、奇跡的に死を免れるたび、国民の忠誠心をかき立てる結果になったと言われています。

42回も殺されそうになり、42回とも未遂に終わるなんて聞いたら、たしかに見えない力が働いていたような錯覚に陥るかもしれませんね。

計42回のヒトラー暗殺計画については、ドキュメンタリー映画「ヒトラーを殺す42の方法」に描かれています(予告編はこちらから)。

ドイツが第二次世界大戦に進んだ背景。

なぜヒトラーの台頭を許したのか。

なぜ暗殺計画は42回とも失敗に終わったのか。

硬派なドキュメンタリーですが、最後まで飽きることなく見ることができます。

トム・クルーズ演じるシュタウフェンベルク

シュタウフェンベルクの人物像

シュタウフェンベルク
Public domain

こちらはクラウス・フォン・シュタウフェンベルクの写真。

名前に「フォン」とあるのは、ドイツでは貴族であることの証です。

シュタウフェンベルクは伯爵家(Graf)の生まれでした。

1943年4月、アフリカの前線で戦闘中イギリス軍機に機銃掃射され、彼は重傷を負ってしまいます。

この時に、右手の手首から先、左手の小指と薬指、そして左目の眼球をを喪失。

ミュンヘンの陸軍病院で数か月療養した後、シュタウフェンベルクは軍務に復帰します。

右手、2本の指、左目を失うような大怪我をしても、「国のためにならないヒトラーを排斥するべき」という彼の思いが消えることはなかったのです。

トム・クルーズが演じることへの批判

ドイツでは、(中略)サイエントロジーの信者であるトム・クルーズがシュタウフェンベルク役を演じることには、強い反発が起きた。(ドイツでは、サイエントロジーは悪質なカルトと見なされている)

(中略) ドイツの政治家は不快感を示し、シュタウフェンベルクの息子ベルトルトも (中略)トム・クルーズを批判した

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AC_(%E6%98%A0%E7%94%BB)#%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%8F%8D%E5%BF%9C


このようにドイツ国内での反発が強かったため、最初は舞台となるベルリンでの映画撮影の許可が下りませんでした。

ヒトラー暗殺未遂事件を描いたクルーズ主演作品、ベルリン市での撮影が不許可に

出典:2007年7月5日 AFPBB News
URL: https://www.afpbb.com/articles/-/2249029?pid=1746236

最終的には「ナチス支配から解放され、完全なる民主主義国家となった統一ドイツの姿」を作品内に盛り込むことに同意し、撮影が許可されたそうです。

ヒトラー暗殺未遂事件を描く映画に、独政府が国防省内での撮影を許可

出典:2007年9月15日  AFPBB News
URL: https://www.afpbb.com/articles/-/2283176?pid=2144076

映画「ワルキューレ」の撮影には、こんな「すったもんだ」があったわけです。

それにしても、本作でのトム・クルーズの外見は驚くほどシュタウフェンベルク本人にそっくり

りこ
りこ
どのくらい似ているのか、映画でチェックしてください!

家族との別れ

シュタウフェンベルクがヒトラー暗殺を決意する際、

国を守るために自分の良心を裏切ってきた

と心情を吐露しています。

当時のドイツは、国を守ることと自分の良心に従うことが両立しない、辛い時代でした。

しかし、自分の良心に従うことは、自分と最愛の家族の命を危険にさらすことを意味します。

自分の良心に従うために、果たして人は、自分と家族の命も危険にさらす覚悟ができるものでしょうか?

日本における「同調圧力」がよく批判されますが、ナチス支配下のドイツでの圧力はそんな生易しいものではありません。

長いものに巻かれ、目立たないように黙って大勢の中に紛れて生きることの安楽さ。

良心のために絶対的権力者に立ち向かったとして、失敗すれば、それは死を意味します。

自分はシュタウフェンベルクの奥さんのように、黙って夫の決断に理解を示せるだろうかと考えてみましたが…

りこ
りこ
とても無理

シュタウフェンベルクと家族の別れのシーンは涙なしに見ることはできません。

7月20日事件|なぜ暗殺は失敗したのか?

7月20日事件
画像出典:Wikipedia CC-BY-SA 3.0

映画「ワルキューレ」はノンフィクションですから、すでに「ヒトラーは暗殺によっては死ななかった」という結末は明白です。

しかもこの映画では、かなり史実に忠実に再現されています。

なので、ネタバレというのはありえないのですが…

この映画の1番の見どころは、やはりシュタウフェンベルクが運命の1944年7月20日に作戦を実行に移すシーン。

りこ
りこ
ドキドキしながら見て欲しい!

どうして写真に残されたように激しい爆発が起きたのにもかかわらず、ヒトラーが死ななかったのか。

それは映画を見てのお楽しみに残しておきたいと思います。

もし、シュタウフェンベルクが現場に仕掛けた爆弾に2倍の威力があったら?

果たして歴史は変わったのでしょうか?

ドキュメンタリー映画「ヒトラーを殺す42の方法」の中で、現場同様にマネキンやテーブルを用意して、検証作業が行われています。

「臆病」なフリードリヒ・フロム

フリードリヒ・フロム
画像出典:Wikipedia  CC-BY-SA 3.0

写真の人物は、フリードリヒ・フロム。陸軍上級大将。

この作品でわたしの一番嫌いな人物は、このフロムです。

最初から最後まで日和見。

態度をはっきりさせず、のらりくらり。

陸軍内にヒトラー暗殺計画があるのを知りながら、それを黙認。

かといって、計画への参加を求められれば、拒否。

絶対に信用できない利己主義の権化のような人物。

彼は自分を守るためならすべてを犠牲にする「臆病な」タイプです。

このフロムにどんな運命が待ち受けているのかは、本編ではなく、映像特典に詳しく取り上げられています。

『ワルキューレ(VALKYRIE)』 関連作品

映画を見た後、興味が湧いてさらに知識を深めたいなら、やっぱり本に限ります。

「ヒトラーとシュタウフェンベルク家」

この映画の背景とシュタウフェンベルクについてもっと詳しく知りたい人にうってつけなのが「ヒトラーとシュタウフェンベルク家」です。

「ワルキューレ ヒトラー暗殺の二日間」 スティ・ダレヤー 作

「ワルキューレ ヒトラー暗殺の二日間」 スティ・ダレヤー 作は、7月20日事件を小説化したものです(原作はデンマーク語)。

『ワルキューレ(VALKYRIE)』 レビューサイト

Yahoo! Japan映画 3.51 点

映画.com 3.1 点

Movie Walker 3点

『ワルキューレ(VALKYRIE) 』まとめ

命がけで守りたいものは何か。

それを守るために他のすべてを犠牲にする覚悟があるのか?

りこ
りこ
同調圧力に屈しない人々の覚悟の凄まじさ。ぜひこの映画でご覧ください。